数ある1176クローンの中でも、圧倒的ダントツな低価格で話題になったKlark Teknikの76kt。
購入してしばらく使用してみましたのでレビューします。


【概要】

Klark Teknik(クラークテクニック)、DTM界隈ではあまり聞いたことがないメーカーかもしれませんね。
でもPA機器界隈では40年以上の歴史がある超有名メーカーです。
特にスピーカーのハウリングを抑制したり音質を調整するグラフィックEQ「DN360」はYAMAHAのQ2031シリーズと並んで世界的スタンダードなド定番。最近はデジタルが主流になっていますが、今も中小規模のライブハウスはもちろん、大きな現場でも頻繁に見かける機材です。
ヘッドホンでいうMDR-CD900STレベルの定番といえば、その凄さが分かっていただけるでしょうか。

初めて76KT(発売初期は1176-KTという名称でした)の情報を見たときは価格よりも「え、klark teknikが!?!?」っていうのが一番の衝撃でした。
きっとPA経験のある方はみんな同じことを思ったんじゃないでしょうか。(笑)

仕様

本体は奥行が短めなので、思ったよりも小さい、そして軽い!という印象です。
片手でも余裕で持てます。 でもツマミやパーツはとてもしっかりしていて、そうそう簡単には壊れそうにない雰囲気が伝わってきます。そのあたりはさすがPA機器メーカーですね。

表向きは1176そのまま。実機を使ったことのある方はもちろん、プラグインで弄ったことのある方ならすぐに使い始められます。
電源スイッチがトグルスイッチというのがポイント高いです。ガチッと電源が入ってLEDが点灯します。
裏面にはPADスイッチが。このあたりはすごく現代的ですね。ジャックもXLRとフォンが使えるので便利ですね。


インプレッション

まだ使用回数は少ないですが、友達のガールズバンドによるロック曲とバラード曲のミックスで使ったときの感想を。

プラグインと比べてみる

まず一番気になるのは「実機と比べてどうなの?」だと思うけど、ごめんなさい実機は使ったことありません!他のレビューにお任せ!!

そして次に気になるのは「1176系プラグインと比べてどうなの?」だと思います。
私も1176プラグインは持っていて(お気に入りはIK MlutimediaのBlack76とAvidのBF76です)、それと差し替えながら試してみました。

感想を端的にいうと、プラグインのあの感じの音がちゃんとしてる!しかもアナログ感があってめっちゃいい!!でした。

プラグイン版でもベンダーによってかなりキャラクターが違っているのは言わずもがな。
でも「1176ってこういう感じの音」っていうイメージはみなさんなんとなく持っていらっしゃるんじゃないかと思います。

76KTはまさにそのイメージの音で、且つ、ちょうどいい感じの中間をとってる印象でした。
強いていうならちょっと大人しめというか端正な雰囲気。分かりやすい色を無理につけるよりもこの自然な感じ、私はすごく好きです。

ボーカルと楽器に使ってみる

ボーカルにレシオ8:1、ツマミは定番ハの字からInputやや下げ、アタック10時あたりでリリース最速の定番セッティングでかけてみると、キレキレで押し出しの強いスピード感のある音に。この時点でプラグインで聞けるあの感じの音になってテンション上がってきます。
しかも、やっぱりアナログアウトボードだけあって、どことなく音の繋がりがなめらかになってる感じが付与されてるんです。ますますテンション上がります。

そこから少し極端なセッティングに振ってみると1176っぽい歪みが出てくるんですが、プラグインほど歪まない?という印象が。
これもたぶんアナログ接続で気持ち程度に音が丸くなってる感じなので、そういう雰囲気になるのかなと思いました。派手めの音にしたいときは明るい音色のケーブルで接続するといい塩梅になるかもしれません。

楽器にはドラムとベースに。ドラムのステムに使うと、そのまま他の1176プラグインと変わりなく使える感じでした。むしろプラグインよりも思い切りよくセッティングできるから作業が早い!(やり直そうとすると取り込み直しになるから時間かかるけど!笑)
ステム全体をレベル突っ込み気味で歪ませてもカッコいいし、アンビエンスだけ強めに潰してルーム感を出したり、単発スネアにガツンってかけて主張を強めにしたり。 ベースも音がググッと前に出てきて、少しオーバードライブで歪ませてるフレーズなんかは色気が3番増しになってキャーってなっちゃいました。
この実機で大きなツマミを回しながら音がヌルヌル滑らかに変わっていく感じ、最高です。これだけで実機買ってよかった…って思っちゃいます。

お次にバラード曲のボーカル。
インプットをだいぶ下げて9時くらい、アタックもリリースも遅めに、リダクションメーターの振れがピークでも2~3dbくらいになるように調整。ほんのり音が太くなるというか、温かく甘くなります。色っぽい! 実はプラグインで同じセッティングにすると時々シビランスが気になるポイントがあったんですけど、76KTだとなぜかそれが全く気になりません。このあたりのナチュラルに音のトゲが均される感じはアナログならではですね。 この検証時の音源はオーディオテクニカのマイクからインターフェース直挿しで録った音らしく少し硬い感じの音だったのが、1176を通すとちょっと良いマイクプリを使ったような質感も付与されて、最高にいい感じになりました。

ほかにもこんなポイントが…

使っていて感じたのが、ツマミの物理的な質感と回すときの重さ。
軽すぎる重すぎず、とても滑らかに回るツマミがすごく気持ちいいんです。
ツマミ自体がしっかりした作りで、微調整もしやすいし簡単に動くほどヤワでもない。
お値段を考えるとこの質感は本当にすごいなと思いました。

あと個人的なおすすめを1つ。

電源は100V~200Vのユニバーサル電源なのですが、断然昇圧して使うことをお勧めします。
私は昇圧トランスからの115V電源で使っています。
100Vから115Vに差し替えると、それだけで音が一気にシャキッとします。フォーカスがもう一段階シビアに合う感じ。太さとシャープさに磨きがかかります。
比較可能な環境だったらぜひ試してみてください。

安かろう悪かろうではなく、ちゃんと1つのアウトボードとして確固たる性格をもった機材でした。
実機の1176完コピではないにしても、1176系コンプの1つとして、他のクローンモデルと比較しても全く劣らないクオリティを持っていると思います。

そしてプラグインでは絶対得られないアナログならではの滑らかさは、一度使うと病みつきになること間違いなし。
1176系コンプを導入検討されている方は、価格やメーカーの選り好みを捨てて試す価値があると思いますよ!

KLARK TEKNIK 76-KT コンプレッサー
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