初めてコンデンサーマイクを買う人が情報を調べたり、人におすすめを聞いた際に名前が良く上がる定番機種というのがいくつかあります。
今回はその中の1本、MXL 2003aのレビューです。
目次
概要
MXLというメーカーについてはR144のレビューで詳しく記載したので割愛。
今回レビューする現行バージョンの2003Aは、MXLのマイクの中でも特に有名なシリーズ。発売からかなり時間が経っているモデルですが、コストパフォーマンスに優れて音が良いということで高い評価を得ています。
2003Aのレビューを検索すると、アマチュアはもちろんプロのミュージシャン・レコーディングエンジニアがレビューされている記事もちらほら。そしてどの記事を見ても、悪いことを書かれている記事は滅多にありません。というか見かけたことがありません。(笑)
また、改造ベースとしてこの2003Aが使われている製品もあり、プロの目から見てもポテンシャルが高いことがわかりますね。
仕様
パッケージとしてはマイク本体にショックマウント、ケースが付属しています。
今となっては当たり前になってますが、よく考えるとこの価格でこれだけついてくるって豪華ですよね。
ショックマウントもけっこうしっかりしているうえ、替えのゴムも付いてきます。
本体は艶消しブラック。なので、ショックマウントなどで擦り傷がつきやすい感じ。私が使っている本体も既にけっこう傷だらけです。
指向性は単一指向性。本体スイッチはローカットスイッチと-10dBパッドスイッチの2つ。
かなりスラっとした細身のフォルムで、同価格帯でライバルとなるRODE NT-1Aよりもやや小さい印象。
重さは軽めでバランスもわりと均等なので、卓上マイクスタンドなどに取り付けてもバランスは崩れにくそうです。
金網の中にラージダイヤフラムがキラリと光ります。
インプレッション
過去に何度も自主制作の録音で使っているので、その時のインプレッションです。
ボーカルを録音してみる
まずはボーカルから。
GAINは一般的なコンデンサーマイクと大体おなじレベル感ですが、サウンドのキャラクターもあってややゲイン低めな印象を持つかもしれません。
サウンドの傾向としては、とにかくナチュラルで色付けが少ない感じ。悪く言えば地味です。
特にRODEのNTシリーズやAKGのマイクの音に慣れていたり聞き比べたりすると、人によってはこもって聞こえるという人もいるかもしれません。
ですが実際に歌を録ってオケに乗せてみると、しっかりした密度の情報量が叩き込まれていて、未処理でもオケに馴染みやすい音になっていることがわかります。
特に耳にきつやすい4Khz以上の高域が適度に落ち着いていて、歯擦音が自然な感じに抑えられるのが私はとても気に入っています。
低域はかなりスッキリした感じ、でもサウンド事体はしっかり拾っているので、EQで持ち上げるとちゃんと出てきます。オンマイクでの収録になりやすい宅録だと、あとからEQで削るくらいなら最初からこれくらいすっきりしたサウンドの方が使いやすそうですね。
ナチュラル系統でいうとAudio-technicaのATシリーズも同じですが、ATシリーズは本当に何も足さず引かずという方向なのに対し、それよりもやや「音作りしたあとの音色」のフィルターがかかるような空気感があって、そのフィルターの塩梅が絶妙という感じですね。
これまで使ってきた印象では、ポップスやバラード系が得意な女性ボーカルさんと非常に相性がいいです。ウィスパーで囁くようなタイプの歌い方でも、耳に痛くなりやすい高域が落ち着きつつも気持ち良いチリチリ感が出てセクシーに聞こえます。
もちろん男性でも、ガナりからしっとり歌い上げる感じまでオールマイティに受け止めてしっかり再現してくれる安心感があります。耐音圧も高めなので、よほどヘヴィーな歌い方をしない限り音が割れるということもありません。
女性ボーカルさんの場合より少しEQ処理は必要になる感じですが、音のキャラがぴったりハマる男性の方も多いのではないでしょうか。
ちなみに、私はナレーション録音時の定番としてよく使っています。音色自体が自然で耳触りがいいというナレーションに最高な特性であるのに加えて、歯擦音が抑えられて後処理も楽になるという一石二鳥なのです。宅録用のマイクが欲しい役者さんにも非常におすすめですね。
アコギを録ってみる
楽器はアコギの弾き語りで使ってみました。
アコギでもやはり少し落ち着いた感じの音になるので、高音弦がやや耳につくかな?というギターの収音につかうと絶妙な塩梅になってくれます。
ストロークはもちろん、ダイナミクスが大きめなフィンガーピッキングでもニュアンスをうまく均してくれるような感じがあり、しっかり追い込めばノーEQでも十分なサウンドで収録することができます。
オフマイクの音はちょっと線が細くなりすぎることもがあるので、弾き語り一発録りの時などはギターと歌に別々にマイクを立てた方がよいかもしれません。
でも、そういった複数マイクで収録した際にも音の馴染みがよいのでミックスの時はすごく楽。
また、マイクプリとの組み合わせを変えてみたりコンプで詰めてみるとよく分かるのですが、単品のマイクの音としても実は「ありそうであまりない音色」なので、マイクバリエーションとして持っておいても活躍できそうです。
まとめ
こうして改めて書いてみると、定番にはやっぱり定番となりえる実力があるんだなと再確認した気がします。
因みによくレビューで「あのNeumannの音に似ているということで有名になった」という記述をよく見かけるのですが、ソースは一体どこなんでしょうね…。私はU87aiだけは実物の音を聴いたことがありますが、あまり似ているとは思いませんでした。(笑) もしかしたらU47やU67のようなビンテージマイクの音色に近いのかもしれないですね。聴いたことある方ぜひ比較レポートしてください。
ただ、Neumannの音に似てる似てないはそれとして、この価格帯の、そしてイチ個性をもったマイクとして非常に秀逸であることは間違いないのではないでしょうか。
コンデンサーマイクのファーストチョイスとしてはもちろん、慣れている方の選択肢の1つとしても末永く付き合っていける名機だと思います。
迷っているようならばぜひお手に取って、使い倒してみてください。
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