宅録でもマイクやプリアンプ、ケーブルにこだわってる人はたくさんいると思いますが、
マイクホルダーにまでこだわっている人はあまり多くないのではないでしょうか。

私もそんなにこだわりはありません。(笑)
でも、マイクホルダーを変えると確実に音は変わります。

それを感じるきっかけになったENHANCED Audio M600のレビューです。


概要

ENHANCED Audioは2005年設立の比較的新しい会社で、スピーカースタンドなどオプションをメインに販売されています。
代表者は元レコーディングエンジニアの方だそう。

同社の名前を知らしめたのが、マイクホルダーのM600シリーズ。
日本国内ではまだあまり頻繁に見かける機材ではないですが、海外では既に高い評価を得ているようですね。

仕様

よくコンデンサーマイクに標準で付いてくるマイクホルダーは、ゴムなど柔軟素材でマイク保持部品を浮かせ、振動を抑制するタイプのショックマウントが主流。

このM600は全く発想が違っていて、金属ネジ3本×2か所の固定で「微動だにしないくらいガッチリ固定。そもそも振動させない」というストロングなスタイル。なんだかロックですね。

M600は、マイクのサイズに合わせて3種類のタイプがラインナップされています。
XL以上はノイマンをはじめとした真空管タイプなどの大型機種向けなので、宅録向け定番マイクのほとんどは一番小さいM600で間に合いそうです。
逆にXL以上だと、細身のマイクはネジが届かない可能性もあり。念のため対応しているサイズのスペックを確認しましょう。

M600 一般的なマイクロホン用。直径65mmまでのマイクをマウント可能。

M600-XL 直径50mm to 85mmまでのマイクをマウント可能。Rode Classic、Neumann D-01、TLM 49、 M149、 M150などに最適。

M600-XXL 直径70mm to 105mmまでのマイクをマウント可能。Blue Bottle、RFT CM7151、 Neumann CMV 3/5などに最適。

ちなみに最近人気のあるLewittのような、ちょっと横長のマイクは3点固定ってどうなるのか。

手持ちの440pureを固定してみたら、一応固定できますが少し工夫がいります。
正面+ナナメから押し付ける感じですね。
見た目はアレだけど、動かそうとしてもビクともしないくらいがっちりホールドできてますよ。
AKGのC414シリーズみたいに角ばったタイプのマイクは一応確認した方がよさそうですね。

あと、少し注意点として、指向性切り替えスイッチなどが付いているマイクは固定するときにネジでスイッチを押し付けたりしないように気をつけましょう!

AT4050でいい感じのところを固定しようとすると、数ミリずれるとちょうどスイッチに当たる状態になって危うくスイッチを潰すところでした。。。ガッツリ見ながらじゃないと固定できないので全く気付かないっていうことはまずないと思いますけどね。(笑)


インプレッション

もう普段からこのM600ばかり使っているので、今回は改めて友達の女子ボーカルさに協力いただいて、AT4050で純正ショックマウント(ゴム固定式)と比較してみました。

結果、M600を使うと音の輪郭がはっきりした!っていうのが一番大きな印象です。

もちろん純正ショックマウントでも音が滲むということは全くありません。
でもM600に固定すると、まだ余地があったのか!というのが分かるというか。

すごく表現しづらいんですが、ちょっと古くなってきたiPh〇neを最新機種に買い替えてカメラを使ったときの感動、みたいな。(笑)
新しい機種に帰ると、めっちゃキレキレでシャキっとしてる!って思いますよね。あんな感じです。

マイクの自体の振動を抑えるだけなので、音質自体が激変することはありません。
でも、どことなく音が落ち着いて柔らかくなる印象があります。
マイクにもよりますが、ほんの気持ち低音が落ち着いている感じ。
雰囲気としてミックス時にNuGen AudioのMonofilterを使ったときと同じような体感だったので、低音域の位相ががっちり定まって柔らかく聞こえるようになったのかなと思いました。

音が柔らかくなるというと「じゃあロックには向かないのでは?」とも思いますけど、そういう意味での落ち着きではなくて「腰が据わる」とも表現できる感じなので、どんなジャンルの音でもプラスにこそなれマイナスにはならない変化です。

録音した音を、実際にミックスする時と同じプラグイン配列・私定番のセッティングに通して聴いてみると、さらに違いが大きく出てきます。
EQの利きの良さと、コンプで潰したときの芯の残り方が明らかにアップしました。

iZotopeのRXに取り込んで分析みてみると、倍音の密度が高くなってる? 少し色が濃くなっているっぽい感じがありました。
マイク本体の振動が抑え込まれていることを考えると、これが本来の純粋なマイクの音色なのかもしれないですね。

少し気になっていたのが、マイクを振動させない構造なので、足音とかマイクスタンド自体の振動を敏感に拾ってしまうんじゃないかということ。

これまでかなりの回数をこのM600で録りましたが、ボーカルさんの足元に薄手のラグを1枚ひいているだけの環境でも、特に変な振動を拾ってしまっている感じは全くありませんでした。なので通常のショックマウントと同じように使えます。

もちろん、マイクスタンドに手が触れてしまったりすると、妙に低音が締まった振動音が入ります。
ドラムのキックにレイヤーで重ねたらいい音圧が出そう。。。

ちなみに私の録音環境がショボくて、エアコン全力稼働だとうっすら60hz以下あたりに部屋の振動重低音が入ってしまうんですが、M600で録ったときはRXでリダクションするときも一発でいい感じに除去できることが多くなった気がします。拾ったノイズさえも音が締まって分離が良くなるのかな…思わぬ副次効果でした。

まとめ

新品で買うとエントリーモデルのオーディオインターフェースやコンデンサーマイクが買えてしまう値段だし、中古では滅多に出回らないのでなかなか手が出しづらいかもしれません。

でも私は買って後悔は全くなかったし、値段相応の満足感がありました。長く使い続けたいと思う愛着のある機材がまた1つ増えた感じ。

「そこそこ機材は揃ってきたけど、録り音のグレードアップをもう一歩!」と思っている方にはうってつけの機材ですよ!

ENHANCED AUDIO M600 高音質マイクマウント
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